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「夢の乗り物」の実体化 ~エアロモービル~


エアロモービルはガソリンで約700kmもの距離を飛行することが可能という、映画やアニメの世界でしか見ることのできなかった、いうなれば「夢の乗り物」。なんと飛行時の時速は約時速200km。飛行機としての性能もさながら、翼を閉じれば普通の駐車場に停められるほどのサイズの自動車へと変わります。 給油も現状存在するガソリンスタンドですることが可能です。

エアロモービルの試作機は、2014年10月29日にオーストリアで開催されるパイオニアズ・フェスティバルにて公開されます。

エアロモービル/エアロモービル社(スロバキア)
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古くて新しい技術② ~地面効果翼機~


地面効果翼機(じめんこうかよくき)(Wing In Ground-effect vehicle,WIG)とは、地面効果を利用して地表ないし水面から数十センチ~数メートルほどの高度で航行する航空機もしくは船舶の一種です。外見は主翼の短い航空機に近く、その翼によって揚力を得て浮上します。

第2次大戦後の旧ソ連で開発された地面効果翼機、エクラノプラン(ロシア語: Экранопланエクラナプラーン) が有名で、「カスピ海の怪物」と呼ばれたこの乗り物は、湖面を機体の幅と同程度の高度を保って飛行し、それによって得られる地面効果を利用することで高速性と大量輸送を両立したようです。

原理的には、水面すれすれを高速で飛行することで、翼下面に空気をためこみ、高い圧力を作り出すことで揚力が増し、抗力を下げられる=地面効果を得るというもの。少ないエネルギーで飛行できる=燃費良く飛ぶことができるというメリットがあります。

東・東南アジアでは、主要都市のほとんどが沿岸部に存在しており、かつ都市間の距離がそれほど遠くありません。特に東南アジアは顕著で、これら主要都市間の往来に航空機を用いると、(燃費良く飛ぶことのできる巡航状態で)飛ぶ距離が短いため、本来は経済的とは言えない状況です。逆に船舶では経済性は良くとも、航空機とは比較できないほどの移動時間がかかってしまいます。

WIGが実用化されれば、経済的に、そして短時間で主要都市間の行き来ができるようになるうえに、航空機のように大規模な空港を造る必要もなく、かつ環境にも優しいという複数のメリットから、WIGの実用化が望まれています。

エクラノプラン



FS-8/フライトシップ社




同じ原理を使って、東北大学流体科学研究所では「エアロトレイン」が研究されています。エアロトレインは、プロペラを動力とし軌道内を超低空飛行するというもの。つまり一種の地面効果翼機です。実用化に最も近い浮上式鉄道は、磁場を用いて浮上する磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)がありますが、最高時速581km/hを記録する一方で浮上・推進に大電力を消費するため、環境負荷が大きいといえます。

一方でエアロトレインは、航空技術を鉄道に取り入れたもので、超低空での空気抵抗による地面効果を用いて効率的に揚力を得ることで軌道内での高速飛行の実現を目指しています。新幹線よりも高速且つ環境負荷の低い輸送手段として日本国内で研究開発が進められ、2020年までに定員350人、時速500kmで浮上走行する有人機体の完成を目標としているそうです。

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古くて新しい技術① ~メガフロート~


先日淡路島へ行ったときにかすめ通っただけなのですが、南あわじ市にの沖合に海釣り公園があります。
通常の海釣り公園は突堤型を想起するのですが、こちらはかなりの沖合に小島が浮かんでいるタイプ。
ちょっと気になって調べてみたら、フロート(筏)だったんですね。
正式には「南あわじ市浮体式多目的公園(海釣り公園メガフロート)」というそうです。
http://www.city.minamiawaji.hyogo.jp/soshiki/suisan/umidurikouen-mega.html


メガフロートの構造は、直方体形状の浮体ブロックを大量に生産し、つなぎ合わせて大型化したのち、固定した杭などに係留したもの、というきわめて単純な構造とのこと。各ブロックは必ずしも現地で組み立てる必要もなく、主に造船所で建設されて建造現場へ曳航され、海洋上にて接合されるそうです。埋め立てや干拓よりもはるかに安価で、さらには空母や大型客船よりも安価かつ短期間で巨大構造物を造ることができるのが最大の利点。また、
1. 地震による影響が殆ど無い。 
2. 潮の流れを阻害することが少なく、自然環境への影響も少ない。
3. 水深や海底地質に関係無く設置することができる。
4. 浮体の内部空間の他目的利用可能となる。
5. 波が来てもあまり揺れない。
などのメリットも実験結果として報告されています。

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メガフロートは、特に洋上空港としての利用が期待されてきました。
実は関西国際空港建設時にもメガフロート案は候補として検討されたそうなのですが、あまりにも従前実績のない手法だったので、あっけなく不採用だったとのこと。その後、数km規模、100年耐用を目指して1995年頃から開発が進められ、1996年には長さ300m、幅60m、深さ2mの実証浮体モデルがつくられ、2000年に住友重機械工業(現・住友重機械マリンエンジニアリング(株))主導のもと横須賀沖にて1000m級の実証浮体が建造され、実際にYS-11機等を用いた離着陸試験を行っています。このときの結果を元にして、4000m級のメガフロートを建造し、空港に利用することが可能であると報告されていました。特に、羽田空港の新滑走路設置に際して、在来の埋立工法をではなくメガフロート工法が採用されるかが注目されました。個人的には中部国際空港建設時の検討案のひとつにメガフロート案が挙げられていたことが大きく報道されていたことを記憶しています。

が、結果はどちらもメガフロート案は見送りに。理由としては、滑走路には長さ4000mが必要ですので、僅か数百メートルのメガフロートの実験では技術的検証に飛躍があり過ぎ、実績不足と結論づけられたとのことです。

実はこのほかにも人的な理由があったようで、
・海洋土木と造船業とで技術のテリトリーに関する摩擦が存在している。

・技術的には確立されているものの全く採用実績がない。
・海洋土木業界(マリコン)とメガフロートを建造する造船業界など、いわゆる族議員も含めて、それぞれの業界の応援団がいるが、造船業界以外の業界の応援団が強力であった。
・所管の国土交通省内部でも、造船業を所管する部署は発言力が強いとはいえなかった。
・羽田の工法問題がピークに達する前に、大型タンカーの更新需要期が重なり、造船業界のメガフロート推進熱が冷めた。
・造船所にとっては、メガフロートは言ってみれば「鉄の箱」であり、自社の技術力を格別誇れる案件ではなく、取り組む熱意が起きにくかった。
・滑走路一本の建造が決まった場合、造船所一社では対応できず、国の指導のもと分割建造が想定されるが、そうなると、各社の船台がおさえられることになってしまい、新造船受注活動に支障をきたす。

・・・こういった事情で、メガフロート空港の建造は日の目を見ておらず、実用化にいたっていないようです。かなり言い訳がましいのですが。

要は、簡単にできてしまう、ということの裏返しで、資材・人材・技術の投入による経済効果が見込めない、そのせいで政財界が嫌がった、ということで括られます。

でもその結果、世界でも類を見ない高い着陸料と地盤沈下問題が厳然と残っていたり。
短期視点の負の産物は、その後の世代が背負うわけですから。
もっと他に稼ぎ先を考えないと。もったいない限りです。





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